合いの手「PPPH」が入る楽曲の特徴に関する一分析
日本大学文理学部情報科学科北原研究室所属
甚野 健太
研究概要
日本のアニメやアイドルはサブカルチャーとして人気である.アニメの声優やアイドルによるライブも活発に行われており,ライブやコンサートの総動員数は年々増えている.こうした声優やアイドルのライブにおいて,観客からアーティストへ向けた行動として,独特な動きやペンライトを振る動作,手拍子,掛け声による合いの手が存在する.ライブでの合いの手は比較的新しい文化であり,また,現状ではサブカルチャーの中でしか注目されていないため,ライブでの合いの手に関して学術的な観点からの分析・考察があまりされてこなかった.しかし,楽曲中の合いの手に関する特徴が分かれば,合いの手を入れて観客が能動的に働きかけ,観客とアーティストで相互に盛り上がる曲を作りやすくすることが期待できる.
本研究では,合いの手が入る楽曲の定量的な調査の第一段階として,声優のライブにおける合いの手の一種である「PPPH」が入れられている楽曲に着目する.「PPPH」の入れられている楽曲の特徴を分析することを目的とし,ライブで「PPPH」が入れられている楽曲と入れていない楽曲の音響特徴量をパターン認識的アプローチにより分析する.多数の音響特徴量から特徴量選択によって選ばれた少数の特徴量を使って「PPPH」有りの楽曲と「PPPH」無しの楽曲を識別できれば,その特徴量に楽曲の違いが含まれるという考えに基づいて音響特徴量による分類実験を行い,「PPPH」の有無を正しく分類できるか調べる.分類実験には,実際にライブで「PPPH」が行われている水樹奈々とアイドルマスターの楽曲を1曲ごとに,A(Aメロ最後2小節を除く),A'(Aメロ最後2小節),B(Bメロ),C(サビ)の4つのセクションに分けて使用する.
分析1では,全特徴量から特徴量選択を行って特徴量を10個に絞って分類実験を行った.その結果,BPMやコード進行に関連する特徴量が多く選ばれた.分類器で差はあるものの,高いものでは91%という高い精度を得られたことから,これらが「PPPH」の有無に関係していると言える.
分析2では,全特徴量からフィルターアプローチによって選ばれた特徴量から影響が強いと考えられる特徴量を種類ごとにまとめて用い,特徴量選択で特徴量を絞って分類実験を行った.その結果,コード進行に関連する特徴量での分類は,水樹奈々の楽曲のBとCにおいて82%,アイドルマスターの楽曲はA'で79%と高い分類精度を得られた.これらのことから,コード進行に関連する特徴量が分類に効果的であると言える.
分析3では,アーティスト差を考慮せず全楽曲に対して特徴量選択を行った.その結果,上位10個の特徴量のうち8個がBPMに関連する特徴量だったが,1位にはサビのドミナントコードを表す特徴量が選ばれた.これまでの分析と合わせると,コード進行に関連する特徴量が「PPPH」の有無の分類に効果的である可能性が高いと言える.また,楽曲のAの特徴量が選ばれなかったことから,Aは「PPPH」の有無には影響しづらいと言える.
分析4では,サビのドミナントコードを表す特徴量のみに絞り,水樹奈々の楽曲,アイドルマスターの楽曲,全楽曲で分類実験を行った.水樹奈々の楽曲は77%以上,全楽曲では70%以上の分類精度を得られた.アイドルマスターの楽曲は50%を切るものもあり高い分類精度とは言えないが,全楽曲では安定した分類精度を得られていることから,サビのドミナントコードが「PPPH」の有無の分類に関係していると言える.
よって,特徴量の中で「PPPH」の有無の分類に特に影響しているのは,コード進行に関連する特徴量であると分かった.また,特に効果的なものは,サビにおけるドミナントコードを表す特徴量だと分かった.
研究資料
卒業論文
2018年2月卒業論文 (pdfファイル)
卒業研究発表スライド
2018年2月卒業研究発表会スライド (pdfファイル)
プログラム
研究に使用したプログラム (zipファイル)