スマートタンバリンを用いた複数人でのカラオケ支援システム

日本大学大学院総合基礎科学研究科地球情報数理科学専攻北原研究室所属

栗原 拓也




研究概要

カラオケは娯楽の1つとして広く根付いている.カラオケを楽しむ理由はいくつか考えられるが,仲間同士の親睦を深めることがあげられる.この場合,カラオケの参加者同士の相互のコミュニケーションが重要である.つまり,歌い手は自らの歌唱を聴き手に伝えるだけでなく,聴き手はその歌唱を聴き,楽しんでいることを何らかの表現で歌い手に伝えることが重要である.これにより,歌い手は聴き手が歌唱を楽しんでくれていることに快を感じ,聴き手にとってもカラオケが単に歌唱を聴く場から,歌い手とともに自己表現をする場と変えることができる.
しかし,現状のカラオケでは必ずしもこのようになっていない.聴き手は単に歌い手の歌唱を聴くのみで,能動的に関わろうとはしないことが少なくない.カラオケ店にはタンバリンやマラカスのような小道具が備えられていることが少なくないが,必ずしも十分に活用されているとは言いがたい.その理由として,タンバリンをどのように活用すれば良いのか分からないこと,不適切な使い方をするとかえって歌唱の邪魔になるために躊躇してしまうことなどが挙げられる.
筆者は,こうした状況に鑑み,卒業論文において,タンバリンにWiiリモコンを組み込み,タンバリンの叩き方(タンバリン譜)を画面に表示することで,タンバリン演奏を促すシステムを提案した.このシステムにより,タンバリンを叩くきっかけを与え,特にタンバリンの叩き手が知らない楽曲に対して適切なタンバリン演奏ができるようになり,カラオケの盛り上げに一定の貢献をすることができた.しかし,タンバリンとWiiリモコンをテープで留めただけであるため,使っているうちに結合部が不安定になってくるという問題(強度の問題),タンバリンの叩き手を1人が担うことでその人がタンバリン演奏に夢中になるため,歌い手とのコミュニケーションにはなっていないという問題(単独演奏の問題)が生じた.また,楽曲によってはタンバリン譜が難しく,正しく演奏できないという問題(難度の問題)も発生した.さらに,叩き手から歌い手への働きかけがタンバリンの音を出すことだけであり,他のモダリティを十分に活用できていないという問題(モダリティの問題),曲調によってはタンバリンがうるさすぎるという問題(音量の問題)も確認された.
本研究では,まず強度の問題と単独演奏の問題に取り組んだ.強度の問題に対してはWiiリモコンを挿入できるタンバリンを3Dプリンタで作成した.単独演奏の問題に対しては,歌い手も含めたカラオケに参加する全員が,タンバリン演奏に参加できるよう改良を行った.AメロやBメロと呼ばれる箇所は叩き手をローテーションさせることとし,サビと呼ばれる箇所や間奏部は全員がタンバリン演奏を行うようにすることで,演奏にメリハリがつくように工夫した.単独演奏条件と全員演奏条件において本システムを使ってもらい,アンケートを取ったところ,「一体感を得られたか」「盛り上げに貢献できたか」などの項目において全員演奏条件の回答が単独演奏条件よりも上回り,一定の効果を有していることが確認できた.
次に,難度の問題,モダリティの問題,音量の問題に取り組んだ.難度の問題については,タンバリンを演奏する目的が,あくまで楽曲を楽しんでいることを周りに伝えてカラオケを盛り上げることであり,指定されたとおりにタンバリンを叩くことではないことに鑑み,表示されるタンバリン譜を簡略化した.また,従来は表示されたタンバリン譜の通りに演奏したときに「OK」という表示されていたが,タンバリン演奏における参加度を定義し,参加度が一定の値を超えたときに演奏者のアイコンが笑顔になるという表示がなされるようにした.モダリティの問題に対しては,タンバリンに光る機能を追加した.タンバリンを叩いたタイミングで光る機能であるが,後述の音量制御機能と併用することで,タンバリンの音をほとんど出さずに光らせることも可能である.音量の問題に対しては,タンバリンに備わっているシンバルを上下から押さえつける機構を導入することで,タンバリンの音量を制御できるようにした.システムを使った1時間のカラオケを6回行ってもらう長期実験を行ったところ,システムを長期的に使用してもカラオケ支援の効果が大きく下がることはなく,演奏のアドバイスにも飽きることなく長期的に効果があることが確認された.また,タンバリンの演奏を増えると,カラオケのメンバーに視線を送る回数が増えているという結果が得られ,システムでタンバリンの仕様を促すことでコミュニケーションが深くなっていると考えれる.しかし,光る機能と音量調整機能を加えたタンバリンは新たな強度の問題と音量の問題により長期実験であまり使われなかった.
以上により,強度の問題,単独演奏の問題を解決することができた.難度の問題は解決策を提案したものの,その効果は十分に検証されていない.光る機能と音量調整機能を加えたタンバリンは実験で使われることが少なく,モダリティの問題と音量の問題を解決するに至らなかった.


システム画面
画像:演奏画面


スマートタンバリン
画像:スマートタンバリン



研究資料


修士論文
2017年2月卒業研究論文 (pdfファイル)

修士論文発表会スライド
2017年2月卒業研究論文スライド (pdfファイル)

プログラム
研究に使用したプログラムとその使い方 (zipファイル)

卒業研究
卒業研究時の資料

動画

Movie