雑音が記憶や作業に与える影響に関する一調査
日本大学 情報科学科 北原研究室所属
松下 禎希
研究概要
雑音環境は, 記憶や集中力を要する思考的な作業に悪影響を与えることが予想される. 雑音にはピンクノイズだけでなく, キーボード, プリンターなどの OA 機器による雑音やオフィスなどでの周囲の会話や電話などが挙げられる.騒音が作業者に対し及ぼす影響については, 今まで多くの研究者によって考察され成果が発表されている. 既存の研究では BGM, 工事や交通による周囲の騒音,OA 機器による雑音を聞きながら計算, 暗記, レポート, 読書などの作業に及ぼす影響について述べられている. 思考的作業を扱った研究に着目すると作業内容は計算が主である. 既存研究では, 2 桁× 2 桁の計算問題を無音, BGM, 工事音, 工事音と BGM を同時に流した環境で実験を行った結果, 音圧レベルの同じ騒音では街頭騒音のような意味のない騒音より,BGM の音楽騒音のほうが知的作業に対する阻害作用が見られた. また工事音環境での知的作業も作業量は少なくなった. また短期記憶において言語情報を持つ有意味騒音のうち, 作業に関連する数字のランダム読み上げ音声は,作業に関連しないニュース音声である有意味騒音よりも妨害要因として与える影響が大きいと述べている.さらに言語情報を持たない無意味騒音と有意味騒音では, 有意味騒音の方が作業に影響を与えると述べた. このように, 短期記憶作業, 計算作業について, 騒音環境下で調査したものがある. しかし同様の環境下でこれら2つの作業に対し実験し, 研究したものはない. そのため本稿では, 作業内容に関連した騒音環境下における暗記と計算作業 2 つを同様の環境で実験を行う.
本稿では, 短期記憶と思考的作業に対して, OA 機器, 作業に関連した騒音の影響を調査した. 我々は, 既存研究と同様の実験と, 同じ騒音条件で思考的作業 (ここではかけ算) に対する実験を行い, 記憶や計算の最中に, 作業に関わる雑音や関係のない雑音を再生し, その影響を調査した. この実験では短期記憶作業に対して, 作業に関連した騒音の方が無関係な騒音より作業効率の阻害に及ぼす影響が大きいという事を確かめた. 作業内容は電話番号に用いられる 8 桁の数字の記憶問題を行った. また思考を必要とする計算作業実験を短期記憶作業と同様の騒音条件で行った. 次に作業内容は 2 桁*1 桁の掛け算を行った. この実験では思考的作業に対して, 作業に関連する騒音の有無による影響について調べた.その結果, 記憶作業では, 作業に関連する有意味騒音のときは, 作業に関連しない有意味騒音よりも正解率が低かった. これは短期記憶に関する既存研究と同様の傾向が出た. また記憶作業, 計算作業において, 70dB における各騒音の正解率の差が1%以内となっており, 70dB という高い音圧レベルとなると有意味, 無意味騒音の平均正解率の差が小さくなった. 騒音が 70dB という高い音圧レベルになった際に, 平均正解率の差がともに 1%以内となったのは, 短期記憶, 計算作業において,各騒音に対して, 騒音の種類に関係なく, 音圧レベルの高さそのものが作業に影響を及ぼしたと考えられる.
研究資料
卒業論文
2018年2月卒業研究論文 (pdfファイル)
卒業論文発表会スライド
2018年2月卒業研究論文スライド (pdfファイル)
プログラム
研究に使用したプログラム (zipファイル)