ベースは、低音部においてリズムとハーモニーの両方を支える、ロックバンドにおいて重要なパートである。ベースパートで奏でられるフレーズ(ベースライン)は、楽曲の特徴に大きく影響を与えることも少なくない。また、アーティストごとにベースラインには、そのアーティストらしさが現れる。しかし、アーティストごとのベースラインの特徴は、不変というわけではない。むしろ、時代の移り変わり、バンドメンバーの変更、本人の音楽的好みの変化などで変化していくのが自然である。こういった時系列的な変化は、音楽専門雑誌などで定性的に語られることはあっても、定量的な分析はあまり見られない。定量的な旋律の分析としては、アーティストのボーカルパートの旋律の特徴を分析する研究や、Mozartの楽曲の特徴を分析する研究などがあるものの、特定のベーシストに着目した研究は少ない。
本研究では、ベーシストとしてRed Hot Chili PeppersのFleaを取り上げ、このバンドのベースラインが前期と後期でどのように変化しているかをパターン認識の手法を用いて分析する。このバンドの各楽曲のベースラインから特徴量を抽出し、各ベースラインが前期のものか後期のものかを識別する。この識別が高精度に行えたなら、その際に用いた特徴量にベースラインの特徴があると考えその特徴量を分析する。