グラフィックイコライザによる音色操作と印象の関係
日本大学文理学部情報科学科北原研究室
増田 誠也
研究概要
近年動画投稿サイトの活性化により, ユーザが制作した動画や楽曲を簡単にインターネット上に投稿できるようになった.
その中でも歌ってみた動画と呼ばれる素人がアーティストやボーカロイドの楽曲をカバーして歌唱した動画が人気を博している.
そこで, ユーザは音源制作を行う必要があり, その音源制作の重要な工程の一つに, 音源のミキシングがある.
ミキシングでは, エフェクターを用いて音源に変化を与え, より良い音源にする必要があるが, エフェクターは多種存在し,
ユーザが意図した音色のパラメータ設定を行うには, 十分な知識や操作の慣れが必要となる.
一方, 「明るい音」や「暖かい音」のような音色の印象語は, ユーザの望む音色を表現しやすいため,
これらの印象語を利用してユーザが望んだ音楽を生成するシステムが作られている.
しかし, エフェクターと印象語の関係は, ほとんど研究されていない.
本研究では, エフェクターの中でも特にメジャーであるグラフィックイコライザ(GEQ) に焦点を当て, 印象語に基づいて,
望みの音色をGEQ を用いて合成することを目的とし, 音色の印象とGEQ のパラメータ設定との関連を分析する.
そのために音色の印象についての聴取実験を行い, 実験から得られたデータを基にGEQのパラメータ設定と音色の印象語との対応関係を見出す.
聴取実験では, 著者がアカペラで歌った音源に27 パターンのイコライジングを適用させたものを, 被験者に聴取させ,
参考文献から抽出した10 種類の印象語ごとに11 段階の評価をしてもらった. その結果を基に重回帰分析を行った結果,
各印象語ごとの回帰式の係数を求めることが出来た. そこから, 「暖かさ」「太さ」「濁り」「まろやかさ」「柔らかさ」は低域を強調すると印象が強くなり,
「派手さ」「明るさ」「軽さ」「クリアさ」「存在感」は高域を強調すると印象が強くなることが分かった.
この結果は, 市販のミキシングのノウハウ本に記載されていた内容と一致した.
今後は被験者を増やし本研究の結果が一般性のある結果であることを示していくとともに,
この知見を活かしてユーザの求めるパラメータを自動で推定するシステムを制作する予定である.
研究資料
卒業論文
卒業研究発表スライド
研究データ